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ウイグル民話・オグズナーマ [20061130]


オグズナーマ


江上鶴也訳 『ウイグル民話集』より



ある日、アイハンが男の子を産んだ。
この子の顔は青く、口は火のように紅く、目は赤く、髪と眉は黒かった。
天女のように美しかった。
この男の子は母親の母乳を吸うと二度と吸わなかった。
生肉や飯や酒を欲しがった。
話し始めた。
四十日後、大きく成長し、歩き、遊んだ。
足は雄牛の足、腰は狼の腰、肩は黒豹の肩、胸は熊の胸のようだった。全身は毛で覆われていた。
馬を飼い、馬にまたがり、狩りをした。
幾日が暮れ、幾夜が明け、若者に成長した。

その頃、この地方に大きな森、多くの川があり、また鳥獣がたくさんいた。
この森に一頭、大きな一角獣がいた。
それは、家畜や人を食った。
とても凶暴な野獣であった。
それは、人々をとても苦しめた。
オグズは勇士であった。
その野獣を退治しようと思った。

ある日、狩りに出た。矛を弓矢を剣を、また盾を持ち馬にまたがった。鹿を一頭仕留めた。
鹿を柳の枝で木に縛り、去った。
翌日、夜が明け来てみると、野獣は鹿を奪い去っていた。
また狩りをして、熊を仕留めた。
熊を金のベルトで木に縛り、去った。
翌日、夜が明け来てみると、野獣は熊を奪い去っていた。
オグズがその木の根本にいると、野獣が来て、角をオグズの盾にぶっつけた。
オグズは矛で野獣の頭を斬りつけ殺した。
そして、剣で頭を切り取り、去った。
再びオグズが来てみれば、ハヤブサが野獣の内蔵を食っていた。
オグズは弓矢でハヤブサを射殺した。
そして、頭を切って言った。

「見よ。
このハヤブサの姿を。
野獣は鹿と熊を食った。
鉄のように堅くても、私の矛が野獣を殺した。
ハヤブサは野獣を食った。
風のように速くても、私の矢がハヤブサを射殺した」と、
オグズはそう言い去った。

これが一角獣の姿である。 = 絵 =

ある日、オグズが天に祈っていると、辺りが真っ暗になり、突然、天から青い光が降り注いだ。
その光は、太陽より輝き、月より明るかった。
オグズがその光の側に近寄ってみると、青い光の中に娘が一人座っていた。
とても美しい娘であった。
額に火のように光った痣があり、まるで、北極星のようであった。
娘はそれほど美しいので、娘が笑えば、天も笑うのであった。
娘が泣けば、天も泣くのであった。
オグズは娘を見て全身が震え、我をなくした。
娘を好きになり娶った。
一緒に暮らした。願いがかなった。
娘は身ごもった。
日が経ち、夜が明けた。
娘は出産した。
男の子三人を産んだ。
一番上をキュン(太陽)、真ん中をアイ(月)、末っ子をユルドゥズ(星)と名付けた。

ある日、またオグズは狩りに出た。
目の前にある湖の中に木の茂みを見た。
木の穴に娘が一人座っていた。
とても美しい娘であった。
目は空よりも青く、髪は流水の如く、歯は真珠のようであった。
娘はそんなに美しいので、人々が娘を見ると、

「うわーうわー、命を奪われるぞ」と言い合った。

牛乳はクミーズ(乳酒)に変わるのであった。
オグズは娘を見て心に火が着き、我をなくした。
娘を好きになり、娶った。
一緒に暮らした。
願いがかなった。
娘は身ごもった。
日が経ち、夜が明けた。
娘は出産した。
男の子三人を産んだ。
一番上をキョク(空)、真ん中をタグ(山)、末っ子をテンギズ(海)と名付けた。

オグズは大宴会を開いた。
人々を招いた。
人々は参加した。
四十の卓と四十の椅子を作らせた。
人々はいろんなものを食べ飲んだ。
宴会の後、オグズは諸官、人々に、

朕は皆のカーン(王)である
弓矢と盾を持て
族紋は我々の紋章となれ
蒼き狼は先祖となれ
鉄矛は森林の如くなれ
狩り場で馬を走らせろ
河川を流れさせろ
太陽は旗になれ
天は天幕地になれ

オグズカーンは方々に勅命を出した。
詔書を書いて、使者を送った。

詔書にはこうあった。

『朕はウイグルのカーンであり、全世界の王である。
汝等が朕に帰順することを望む。
朕に従えば、贈り物を与え、友となろう。
朕に従わねば、怒りを持って大軍を率いて討ち、敵となろう。
兵達はことごとく滅するであろう』

その頃、右方にアルトゥンカーンという王がいた。
アルトゥンカーンはオグズカーンに使者を送って来て、たくさんの金、銀、宝石を献上し、オグズカーンに帰順を示した。
オグズカーンとアルトゥンカーンは友人になった。

左方にウルム(ローマ)という王がいた。
ウルムカーンはオグズカーンの詔書を受理しなかった。
オグズカーンを朝貢しに来なかった。

「この詔書を受理しない」と言って、勅命に従わなかった。

このことで、オグズカーンは怒り、ウルムカーンに兵を向ける準備をした。
旗を揚げ、兵を率いて出発した。
四十日後、ムズタグアタという山の麓に着いた。
天幕を張って、静かに眠った。
夜が明けると、オグズカーンの天幕に、太陽光のような光が射した。
その光の中から、蒼い毛、蒼いたてがみの大きな雄狼が現れた。

その狼はオグズカーンにこう言った。

「おい、オグズ。
お前、ウルムを討つなら、おれが先導してやろう」

オグズカーンは天幕をたたみ、馬にまたがった。
見れば、兵達の前方に蒼い毛、蒼いたてがみの大きな雄狼が先導していた。
オグズカーンと兵達は、狼の後について前進した。
数日後、狼が立ち止まった。
オグズカーンと兵達も立ち止まった。

この地方にイティルという河があった。
イティル河畔のカラタグ(黒山)の麓で大戦が行われた。
両軍の間で、とても多くの戦があった。
戦は人々を苦しめた。
戦はそれほど激しかったので、イティル河の水が真っ赤に染まった。
オグズカーンが勝利した。
ウルムカーンは敗走した。
オグズカーンはウルムカーンの領土を得た。
ウルムカーンの国民を支配した。
多くの戦利品が持ち帰られた。

ウルムカーンに従兄弟があり、その名をウルスベクと言った。
ウルスベクは息子を山の頂に住まわせていた。
四方は深い壕で囲われていた。
国を守らせるため送った。
そして、息子に、

「国を守らねばならぬ。
戦が始まっても国を守ってくれねばならぬ」と言った。

オグズカーンはその国に向けて出発した。
ウルスベクの息子は、オグズカーンに多くの金銀を献上しに来てこう言った。

「おお、閣下は私のカーンだ。
父はこの国を私にくれた。
私はこの国を守らねばならない。
戦が開始されても、この国を守れと言われた。
もし、父が怒れば私はどうなるのだ。
私は閣下の勅命を実行するつもりでいる。
私達の幸福は、閣下の幸福である。
私の一族は閣下の一族の一員である。
天は閣下に全ての土地を賜った。
私の身と幸福は閣下に任せた。
閣下に貢ぎものを送ろう。
友情に背かないために」と言った。

オグズカーンは若者の言葉に満足して、高らかに笑った。
そして、

「朕に多くの金銀を贈ってくれた。
国を守ってくれ」と言った。

それで、若者にサクラップ(守り)と名付けて友情を交えた。

その後、オグズカーンは兵達とイティル河に来た。
イティル河は大河である。
オグズカーンはその河を見て言った。

「イティル河をどうして渡るか」

兵の中にウルス・オルダ・ベクという侯がいた。
その人は有能な人物であった。
この侯は河岸にたくさん木があるのを見て、木を切り倒し水に浸け、その木に乗ってイティル河を渡った。
オグズカーンは高らかに笑い言った。

「おい、お前。
この地のベク(侯)になれ。キプチャクと名乗れ」

彼等は前進し続けた。
オグズカーンは再び、蒼い毛、蒼いたてがみの大きな雄狼を見た。
この蒼き狼が言うには、

「オグズよ。
これで、兵達を率いてここから移動しろ。
国民や諸侯達を率いて行け。
おれが導いて行こう」

夜が明けると、オグズカーンは雄狼が兵達の前を走り先導しているのを見てとても喜んだ。
そして、前進し続けた。

オグズカーンは斑馬に乗っていた。
この馬をとても好いていた。
途中、この馬がいなくなった。
この地に高い山があった。
上の方に氷河があった。
その頂上に真っ白い雪があった。
そのため、この山はムズタグ(氷山)と呼ばれた。
オグズカーンの馬はこのムズタグに入って行った。
このため、オグズカーンは長く悲しんだ。
兵達の中に背が高く、丈夫で何事にも怖れない勇士がいた。
多くの戦を戦い抜いた男であった。
この男が馬を探しに山に入って行った。
九日後、オグズカーンに斑馬を渡した。
ムズタグは寒いので、この男の全身に氷雪が張り付いて真っ白だった。オグズカーンは大喜びで笑い、言うには、

「おい、お前。
ベクの長になれ。
永久にカルルクと名を名乗れ」

彼にたくさんの財宝を与えた。

再び前進し続けた。
オグズカーンは途中、一軒の高い家を見た。
この家の壁は金で、屋根は銀で、門は鉄でできていた。
戸は閉められていて、鍵がなかった。
兵の中に優れた技術を持った者がいた。
その人の名はトムールドゥ・カーグルという。
オグズカーンはその人に、

「お前、この地に残れ。
戸を開けろ。
開けた後城に戻れ」と命令した。

そして、その人にカラチと名付けた。

再び前進し続けた。
ある日、蒼き毛、蒼きたてがみの雄狼が、また途中で止まった。
オグズカーンも止まり、天幕を張った。
ここは不毛の地であった。
チュルチットと呼ばれた。
国民は多く、土地は広かった。
この地は牛馬、金銀、宝石が多かった。
チュルチット王と国民は、オグズカーンに逆らった。
戦が始まった。
両軍、弓を引き、剣を交え戦った。
オグズカーンがチュルチット王を負かした。
首を取った。
チュルチットの国民を支配した。
戦の後、オグズカーンの兵達、諸官、国民達にたくさんの戦利品を与えた。
それを運ぶのに馬、ロバ、牛が足りなかった。
オグズカーンの兵の中に年老いた技術に優れた者がいて、名をバルマクリック・ヨスン・ビリクと言った。
その技師は高車の荷車を一台作った。
荷車の前に生きた戦利品を配し、それらに荷車を引かせた。
臣民はこれを見て驚き、自分達も荷車を作った。
高車の荷車が通ると、カンガ、カンガと音を立てた。
それで、その高車の荷車をカンガと名付けた。

オグズカーンはカンガを見て笑い、言うには、

「カンガと戦利品を生きた戦利品に引かせておる。
高車の荷車を永久に忘れてしまわないために、カンガルックとお前、名乗れ」と言い終え、去った。

その後、オグズカーンは、再び蒼い毛、蒼いたてがみの雄狼と一緒に、シンド(インド)、タングット(西夏)、シャガム(シリア)方面に遠征した。
多くの戦の後、オグズカーンはそれらの地を征服して、自分の領地に加えた。

忘れてしまってはいけない。
南方にバルカンという地があることをしらねばならない。
その地はとても肥沃で暑いところである。
その地は獣や鳥がたくさんいる。
金、銀、宝石がたくさんある。
その地の民の顔は真っ黒である。
王の名はマサルカガンという。

オグズカーンはその地に馬を馳せた。
とても激しい戦いであった。
オグズカーンが勝ち、マサルカガンは逃げた。
オグズカーンはこの地を占領した。
味方達はとても喜んだ。
敵達はとても悲しんだ。
オグズカーンはこの勝利の後、無限の財物と家畜の主となった。
そして、それらを自分の国へ運び去った。

忘れてしまっていけない。
人々に知らせなければならない。
オグズカーンの側近に白髭、白髪の有能な老人がいた。
その老人は万事に通じ、また公明正大であった。
その名はウルグ・トゥルクである。
ある日、ウルグ・トゥルクは夢で一本の金の弓と三本の銀の矢を見た。この金の弓は日が出てから日が沈むまで伸びた。
三本の銀の矢は北をさしていた。
目が覚めてから夢で見たことをオグズカーンに言って、また、

「おお、我がカーン。
長寿であらせられますよう。
おお、我がカーン。
臣民に公平であらせられますよう。
天が夢で教示してくれました。
占領した土地を御子達に分け与えよと」

オグズカーンはウルグ・トゥルクの話を聞いて大層喜んだ。
そして、

「お前の善いようにしろ」と言った。

次の日、夜が明けると子供達を呼んで来させ、言うには、

「おい、息子達よ。
狩りに出たいのだが、年を取ってしまって狩りに出る力がない。
キュン、アイ、ユルドゥズの三人は、日の出る方へ行け。
キョク、タグ、テンギズの三人は、日の沈む方へ行け」

それで、三人は日の出る方へ、残りの三人は日の沈む方へ行った。

キュン、アイ、ユルドゥズは多くの獣や鳥を狩った。
途中、金の弓を見つけた。
それで、その金の弓を父に献上した。
オグズカーンは喜んだ。
そして、金の弓を三等分して、言うには、

「おい、兄達よ。
お前達が持っていなさい。
お前達、弓と同じく矢を天まで射よ」

その後、キョク、タグ、テンギズは多くの獣や鳥を狩った後、途中、銀の矢三本を見つけた。
それで、その銀の矢を父に献上した。
オグズカーンは喜んだ。
そして、銀の矢を三人に分け与えて、言うには、

「おい、弟達。
この矢はお前達が持っていなさい。
弓は矢を放つ。
お前達、矢と同じく弓に従え」

その後、オグズカーンは大会を開いた。
臣民を召集した。
彼等は集まり、協議し合った。
オグズカーンは大きな天幕にいた。
右側に四十クラチ(尋)の長い木一本を立てていた。
その先端に金の鶏一羽を吊した。
その根本に白羊一頭を繋いだ。
左側に四十クラチの長い木一本を立てていた。
その先端に銀の鶏を吊した。
その根本に黒羊を繋いだ。

右側にブズク達が座った。
左側にウチオク達が座った。
四十日、日夜、宴を開いた。
飲み合い、食べ合い、愉しみ合った。
その後、オグズカーンは子供達に国土を分け与えた。
そして言うことには、

「おい、息子達よ。
朕は長く生きた。
多くの戦をした。
弓で多くの矢を射た。
馬と多くの路を進んだ。
敵達を泣かせ悲しませた。
味方達を喜ばせた。
天の前に義務を果たした。
それで、国土をお前達に分け与える」
(了)



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2006-11-30(Thu) 17:45 民話 | 編集 |


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